【広島県】令和4年度/2022年度入学者高校入試選抜試験:理科

広島県の2022年3月実施の令和4年度(2022年度)入学者の公立高校入試問題の解説をしています。
受験勉強において、過去問を解くことはとても効果的な勉強法です。ぜひ、受験までに一度挑戦し、問題の傾向を掴んでおきましょう。合わせて、対策などをたてられるととても良いですね。
また、過去問で苦手な点が見つかった場合は、そこを中心に試験日当日までにしっかりと対策しておきましょう。

今年度の理科は4つの大問に分かれています。難易度は全体的に難です。
大問1の生物の難易度は難です。記述問題などで考察をさせる問題が出てきます。
大問2の化学の難易度はやや難~難です。こちらも考察させる問題が出てきます。
大問3の地学の難易度は激難です。かなり難しいです。数学の知識が必要になります。
大問4の物理の難易度はやや難~難です。光の屈折と反射についてしっかりと理解をしておく必要があります。

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大問1

問題文

科学部の平野さんたちは、呼吸や心臓の拍動について話し合っています。次に示したものは、このときの会話です。あとの1~3に答えなさい。

平野:運動をしたときに呼吸数や心拍数が変化することについて、考えてみようよ。
小島:それなら、まずは、①呼吸の仕組みと②血液循環の仕組みについてまとめてみよう。
平野:そうだね。図を示してまとめると分かりやすいんじゃないかな。
小島:それはいいね、それから、③実際に運動をしたときに呼吸数や心拍数がどのように変化するかを調べると、何か分かるんじゃないかな。
平野:おもしろそうだね。やってみよう。

1 下線部①について、右の表1は、ヒトの呼吸における吸う息と吐く息に含まれる気体の体積の割合についてまとめたものです。また、下の図1は、ヒトの肺の一部を、図2は、肺胞の断面を、それぞれ模式的に示したものです。あとの(1)・(2)に答えなさい。

(1)表1中の気体Aと気体B、図2中の気体Xと気体Yにおいて、二酸化炭素を示しているのはそれぞれどちらですか。次のア~エの組み合わせの中から適切なものを選び、その記号を書きなさい。
ア:気体Aと気体X イ:気体Aと気体Y ウ:気体Bと気体X エ:気体Bと気体Y

(2)図1のように、ヒトの肺は、肺胞という小さい袋が多数集まってできています。このような肺のつくりになっていることにより、効率良く気体の交換を行うことができるのはなぜですか。その理由を簡潔に書きなさい。

2 下線部②について、次に示したものは、平野さんたちが、血液循環の仕組みについて調べたことをノートにまとめたものです。下の(1)・(2)に答えなさい。

(1)図4中のA~Dには図3中のア~エのいずれかの部屋が当てはまります。A~Dには、それぞれどの部屋が当てはまりますか。図3中のア~エの中から適切なものをそれぞれ選び、その記号を書きなさい。

(2)文章中のEに当てはまる適切な語を、次のア・イから選び、その記号を書きなさい。また、Fに当てはまる内容を簡潔に書きなさい。

3 下線部③について、平野さんたちは、運動した時の呼吸数や心拍数の変化について、右の図5のように、医療用の装置を作って調べました。この装置では、心拍数とともに、酸素飽和度が計測されます。酸素飽和度は、動脈血中のヘモグロビンのうち酸素と結びついているものの割合が計測され、およそ96~99%の範囲であれば、酸素が十分足りているとされています。次の【ノート】は、平野さんが調べたことをノートにまとめたものです。【会話】中のGに当てはまる語を書きなさい。また、H・Iに当てはまる内容をそれぞれ簡潔に書きなさい。

【会話】
平野:先生。運動すると、酸素飽和度の値はもっと下がると予想していましたが、ほぼ一定に保たれることが分かりました
先生:なぜ、酸素飽和度の値はもっと下がると予想していたのですか。
平野:運動時、筋肉の細胞では、栄養分からより多くの(G)を取り出す必要があるので、より多くの酸素が必要だと思ったからです。でも、酸素飽和度が一定に保たれているということは、必要な酸素が供給されているということですね。
小島:そうだね。必要な酸素量が増えても(H)ことで、細胞に酸素を多く供給することができ、そのことによって、(G)を多く取り出すことが出来るのですね。
先生:そうですね。ヒトの場合、今回のような激しい運動時は、1分間に心室から送り出される血液の量は、ヒトの場合、平均70mlです。1分間に心室から送り出される血液の量は、1回の拍動で心室から送り出される血液の量と心拍数の積だとして、今回の運動量について考えてみましょう。
小島:今回の安静時では、心拍数を平均の70回とすると、1分間で約4.9Lの血液が心室から送り出されることになります。これを5倍にすると、1分間に心室から送り出される血液の量は約24.5Lになるはずです。
平野:今回の運動時では、心拍数の平均値は192回だよね。あれ?1回の拍動で心室から送り出される血液の量を70mlとして運動時の場合を計算すると、24.5Lには全然足りません。
先生:そうですね。今回のような激しい運動時に、1分間に心室から送り出される血液の量が安静時の約5倍にもなることは、心拍数の変化だけでは説明ができないですね。
小島:運動時には安静時と比べて、心拍数の他にも何か変化が生じているのかな。
先生:そのとおりです。それでは、ここまでの考察から、何がどのように変化していると考えられますか。
平野:そうか。(I)と考えられます。
先生:そうですね。そのようにして生命活動を維持しているのですね。

解答・解説

1(1) 【正答 エ】
二酸化炭素は、吸う息よりも吐く息の方が多く含まれるので、表1では気体Bが該当すると分かる。
また、血液中の赤血球に酸素を与えることから、図2では気体Yが二酸化炭素だと分かる。

1(2) 【正答 (例)表面積が大きくなるため】
人体は、このように表面積を大きくして吸収などを出来るようになっている箇所が随所にある。

2(1) 【正答 A:イ B:エ C:ア D:ウ】
名称としてはアが右心房、イが左心房、ウが右心室、エが左心室である。
肺から新鮮な血液は心臓のある左から、心房→心室の順に通ると覚えておくと良い。

2(2) 【正答 E:イ F:(例)逆流しない】
弁は一方向にだけに進めるようにする電気回路でいうダイオードのようなもの。血液は静脈→動脈に流れるので、静脈に弁がついている。

3G 【正答 エネルギー】
筋肉を動かすためにはエネルギーが必要。

3H 【正答 (例)呼吸数や心拍数を増やす】
【ノート】から読み取ればよい。

3I 【正答 (例)1回の拍動で心室から送り出される血液の量が増えている】
血液の量を増やすには拍動の血液の量自体が増えていると類推することができる。

大問2

問題文

ある学級の理科の授業で、田中さんたちは、金属と電解質の水溶液を用いてつくったダニエル電池で、電流を取り出せるかどうかを調べる実験をして、レポートにまとめました。次に示したものは、田中さんのレポートの一部です。あとの1~4に答えなさい。

1 下線部①について、硫酸亜鉛のような電解質は水に溶けて電離します。次の文は、電離について述べたものです。文中のA・Bに当てはまる語をそれぞれ書きなさい。
電解質が水に溶けて、(A)と(B)に分かれることを電離という。

2 下線部②について、次の文は、ダニエル電池によるエネルギーの変換について述べたものです。文中のC・Dに当てはまる語として適切なものを、下のア~オの中からそれぞれ選び、その記号を書きなさい。
ダニエル電池では、(C)が(D)に変換される。
ア:熱エネルギー
イ:力学的エネルギー
ウ:化学エネルギー
エ:核エネルギー
オ:電気エネルギー

3 〔疑問〕について、次に示したものは、田中さんたちが、ダニエル電池において、亜鉛版と銅板の表面が変化したことを、電流が流れる仕組みと関連付けてまとめたものです。〔考察〕中のEに当てはまる内容を、「電子」、「イオン」、「原子」の語を用いて簡潔に書きなさい。また、ⅰ、ⅱの□内の化学反応式を、イオン化学式や電子1個を表す記号e-を用いて、それぞれ完成しなさい。

4 さらに、田中さんたちは、ダニエル電池の電圧を測定し、ダニエル電池の亜鉛版と硫酸亜鉛水溶液を、それぞれマグネシウム板と硫酸マグネシウム水溶液に変えた電池Ⅰの電圧について調べました。次の図3は、ダニエル電池の電圧を測定したときの様子を、図4は、電池Ⅰの電圧を測定したときの様子を、表2は、測定結果をそれぞれ示したものです。また、下に示したものは、そのときの田中さんたちの会話です。あとの(1)・(2)に答えなさい。

田中:先生。ダニエル電池では、亜鉛が電子を失って亜鉛イオンになって溶け出したとき、その電子が移動することによって電流が取り出せました。だから、電池の電圧の大きさは、電池に用いる金属の(F)が関係していると思います。
先生:良い気づきです。電池の電圧の大きさは、+極と-極に、金属の(F)の違いが大きい金属同士を組み合わせて用いた方が大きくなります。
川口:だから、表2のように電池Ⅰの方がダニエル電池よりも電圧が大きかったのですね。
田中:ということは、亜鉛、銅、マグネシウムの(F)の順番から考えると、右の図5のような、ダニエル電池の銅板をマグネシウム板に、硫酸銅水溶液を硫酸マグネシウム水溶液に変えた電池Ⅱの電圧は、電池Ⅰの電圧より(G)なると思うよ。
川口:そうだね。また、電池Ⅱは亜鉛版が(H)だね。
先生:そうですね。2人とも正しく理解できていますね。

(1)会話文中の(F)に当てはまる内容を簡潔に書きなさい。

(2)会話文中の(G)・(H)に当てはまる語はそれぞれ何ですか。次のア~エの組み合わせの中から適切なものを選び、その記号を書きなさい。

解答・解説

1 【正答 A:陽イオン B:陰イオン】
AとBの順番は逆でもOK

2 【正答 C:ウ D:オ】
ア:熱エネルギーは加熱したりするときのエネルギー
イ:力学的エネルギーは運動エネルギーと位置エネルギーの和
エ:核エネルギーは核分裂を起こすときのエネルギー

3E 【正答 (例)硫酸銅水溶液中の銅イオンが電子を受け取って銅原子となって付着する】
陽イオンが電子を受け取って、原子となって発生することが書かれていればOK

3ⅰⅱ 【正答 ⅰ:(Zn2+ + 2e-) ⅱ:(Cu2+ + 2e-)】
電気化学式はトータルでプラマイゼロになる。

4(1) 【正答 (例)イオンへのなりやすさ】
難問です。通称「イオン化傾向」といいます。

4(2) 【正答 エ】
同じく難問です。実験結果から「マグネシウム>亜鉛>銅」の順でイオンになりやすいことが分かります。
電池Ⅱはマグネシウムと亜鉛を用いるので、当然電池Ⅰのマグネシウムと銅を用いたときよりも電圧は小さくなります。
また、マグネシウム電極付近では(Mg→Mg2+ + 2e-)の反応が起こり、亜鉛電極付近では(Zn2+ + 2e-→Zn)の反応が起こるので、亜鉛が電子を受け取る+極だと分かります。

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大問3

問題文

木下さんは、次の写真1のように、太陽が地平線の近くを動いて、1日中沈まない現象が見られる地域が海外にあることに興味をもち、この現象が見られる都市Pについて調べました。次に示したものは、木下さんが調べたことをノートにまとめたものです。あとの1~4に答えなさい。

1 下線部①について、次の文章は、太陽の1日の見かけの動きについて述べたものです。文章中の□に当てはまる語を書きなさい。
地球が1日1回、西から東へ自転することによって、太陽が東から西へ動いていくように見える。このような太陽の1日の見かけの動きを、太陽の□という。

2 下線部②について、図1は、日本のある地点における秋分の日の太陽の通り道を、透明半球上に実線で示したものです。次のア~エの中で、同じ地点における冬至の日の太陽の通り道を、この透明半球上に破線で示したものとして最も適切なものはどれですか。その記号を書きなさい。

3 図2は、地球が公転軌道上の夏至の日の位置にあるときの太陽の当たり方を模式的に示したものです。次の(1)・(2)に答えなさい。ただし、地軸は地球の公転面に垂直な方向に対して23.4度傾いているものとします。

(1)次の文章は、木下さんが、図2を基に、地球上のどの地域であれば、太陽が一日中沈まない現象を見ることが出来るかについてまとめたものです。文章中Aに当てはまる値を書きなさい。また、Bに当てはまる内容を簡潔に書きなさい。
夏至の日に、太陽が1日中沈まない現象を見ることができる地域と見ることができない地域の境目は、北緯A度であり、この北緯A度以北の地域でこの現象を見ることができる。一方で、同じ日の南極点では太陽が(B)と考えられる

(2)図3は、木下さんが住んでいる日本の北緯34.2度の位置にある地点Aの、夏至の日における太陽の南中高度を調べるために、木下さんが、地点Aと地点Aにおける地平面を図2に書き加えたものです。夏至の日における、地点Aの太陽の南中高度は何度ですか。

4 木下さんは、都市Pで太陽が1日中沈まない現象が見られたある晴れた日の、都市Pと日本のある都市Qの気温を調べて、図4を作成しました。次に示したものは、木下さんが図4を見て、都市Pでは太陽が1日中沈まないのに、気温があまり上がらないことに疑問をもち、実験をしてまとめたレポートの一部です。下の(1)・(2)に答えなさい。

(1)〔方法〕中のCに当てはまる内容を簡潔に書きなさい。

(2)〔考察〕中のDに当てはまる内容を、「南中高度」、「面積」の語を用いて簡潔に書きなさい。

解答・解説

1 【正答 日周運動】
太陽は動かない。地動説と言います。

2 【正答 ア】
冬至は秋分の日よりも日が短くなるので、イ・エは不適。太陽の動きは平行移動したものになるので、ウも不適。

3(1) 【正答 A:66.6度 B:(例)一日中昇らない】
難問です。Aは90°から地軸の23.4°を引くことで求まります。Bは一転して簡単です。

3(2) 【正答 79.2度】
難問です。夏至の日の南中高度は90°-(北緯-23.4°)で求まります。

4(1) 【正答 (例)影が見えなくなる】
垂直に光が差したとき、影は見えなくなります。

4(2) 【正答 (例)太陽の南中高度は低く、同じ面積の地面が太陽から得るエネルギーは小さい】

大問4

問題文

科学部の山田さんは、音の伝わり方や光の進み方について興味をもち、実験をして調べました。あとの1~3に答えなさい。

1 次で示したものは、山田さんが音の伝わる速さを測定する実験を行い、ノートにまとめたものです。下の(1)・(2)に答えなさい。

(1)〔考察〕中のaに当てはまる語を書きなさい。また、bに当てはまる語句を書きなさい。

(2)〔考察〕中のcに当てはまる値を書きなさい。

2 次の写真1は、1匹の金魚がいる水を入れた水槽を正面から見たときの様子を撮影したもので、写真2は、写真1と同時に、この水槽を別の位置から見たときの様子を撮影したものです。写真2において、水槽の水面と側面からそれぞれ1匹ずつ見えている金魚は、金魚が実際にいる位置とは違う位置にそれぞれ見えています。

山田さんは、写真2の水槽の水面から見えている金魚について、金魚が実際にいる位置を点C、見る人の目の位置を点D、水面から金魚が見える位置を点Eとして、これらの点の位置関係を図2のように方眼紙上に模式的に示しました。点Cからの光が、水面を通って点Dまで進む道筋を、実線で書きなさい。

3 次の図3は、歯の裏側を見るために使われるデンタルミラーを模式的に示しており、デンタルミラーには、円形部分に鏡がついています。山田さんは、図4のように、デンタルミラーと洗面台の鏡を使って、歯の裏側を観察しており、図5はそのときの歯の裏側を口の内側から見た様子と、デンタルミラーで映した範囲を示したものです。下の(1)・(2)に答えなさい。

(1)山田さんは、図4でデンタルミラーに映っている歯の裏側の実際の位置を点F、山田さんの目の位置を点Gとして、図6のように、点F、点G、デンタルミラーの鏡、洗面台の鏡の位置関係を、方眼紙上に模式的に示しました。このとき、点Fからの光がデンタルミラーの鏡と洗面台の鏡で反射して点Gに届くまでの光の道筋を、実線でかきなさい。また、デンタルミラーの鏡に映ってみえる歯の裏側の見かけの位置は、デンタルミラーの鏡の奥にあります。この見かけの位置に印をかきなさい。

(2)図5でデンタルミラーに映っている歯の裏側の様子は、図4で山田さんが見ている洗面台の鏡にはどのように映っていますか。次のア~エの中から最も適切なものを選び、その記号を書きなさい。

解答・解説

1(1) 【正答 a:振動 b:同じ速度】
音は空気中を振動させながら一定の速度で進みます。

1(2) 【正答 344m/s】
86mの距離を進むのに0.25秒かかるので
86÷0.25=344

2 【正答 下図参照】

光は直進するので点Eから点Dを結ぶ直線と、水槽の水面が接する点をFとすると、点Cと点Fを結び、点Fと点Dを結んだものが答えとなる。

3(1) 【正答 下図参照】

難問です。鏡の作図は、鏡の奥に像を作ることが大切です。
見かけの位置は右から1番目、下から3番目の位置に来ることが分かります。これを点Hとします。
点Hと鏡に線対称な位置を点H’とし、点H’と点Gを結び鏡で折り返します。(入射角=反射角)
デンタルミラーの鏡と接する点をIとすると、点Iと点Fを結べば作図完了です。

3(2) 【正答 ウ】
今回見える像は虚像になるのでウが正解です。

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