100マス計算のすすめ
100マス計算とは、縦・横に並ぶ数字が交わるマスに、指定された四則演算を行った答えを記入していく計算トレーニングです。小学生の基礎学力向上に成果が見られたということで有名なり、保護者の皆さんも一度は耳にしたり、ご自身で取り組まれたりしたご経験があるのではないでしょうか。
100マス計算の目的は?
この100マス計算、基本的には子供の集中力や計算力の向上が目的とされています。毎回時間を計って取り組むことで集中を促し、算数の基礎となる四則演算の基礎を繰り返し取り組むことで計算力が向上します。計算の得意不得意によらず、自分の記録として成果が見えやすいものでもあります。
文章問題や計算問題として出題されると、その結果は“正解”か“不正解”となり、その正答率でしか成果を見ることができません。算数が得意な子にとっては良いかもしれませんが、苦手な子にとっては、その苦手意識を抱えたまま授業の学習内容の難易度が上がり、悪循環をきたす可能性があります。
一方、100マス計算は簡単な計算によるトレーニングなので、繰り返しトレーニングを重ねることで、確実に計算の速さや精度が上がります。“正解”か“不正解”か、という結果ではなく、過去の自分との比較による量的指標での評価になるので、算数の得意不得意によらず、達成感や自信を得ることができます。また、「もっと早くなりたい→毎回集中して取り組む→前回の自分との比較で効果が目に見える→自信がつく・面白さを感じる」というように、お子さん一人一人が自律的に自分の結果を捉えることで、集中力や計算力だけではなく、学習に対する内発的動機付けにつながることが期待されます。
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内発的動機づけについて
ここで、内発的動機づけについて少しお話させていただきます。
学習に関する動機づけには様々なものがありますが、内発的動機づけは活動への好奇心や興味・関心に基づくものです。例えば、「楽しい・面白いから勉強する」「新しい知識が得られて嬉しいから勉強する」といったような動機づけがこれにあたります。「先生や親に叱られないように勉強する」「ご褒美に何か買ってもらえるから勉強する」など、何らかの目的の達成に基づく外発的動機づけと比較するとわかりやすいかと思います。
小学生は、中高生に比べて、この内発的動機づけが学習意欲や成績に反映されやすい傾向にあります。100マス計算によって得られた内的動機をうまく活用できれば、算数だけでなく他の教科の学習においてもその効果を波及させることができるでしょう。実際に小学5年生を対象に行った標準学力調査では、10か月の100マス計算によるトレーニングで、算数における基礎力、応用力に加え、国語においても基礎力と応用力が上がったという報告があります。このように、100マス計算で基礎を徹底的に鍛えることで、相対的な学力の向上にもつながるのです。
ここまで100マス計算のメリットをお伝えしてきましたが、100マス計算のトレーニングを嫌がるお子さんも中にはいます。無理やりやらせることによって、お子さんの学習に対するやる気を削いでしまったり、継続が困難になってしまったりしては、元も子もありません。
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100マス計算への取り組み方について
そこで、取り組み方に関していくつかポイントを挙げていきます。
1.タイムや正答率を気にしすぎない
計算が早くなること、計算の精度が上がることは良いことではあります。だからと言って、毎回前回よりも良い結果を出すことができるとは限りません。タイムが上がらなかった、ミスが増えてしまった日でも、「そういう日もあるよ」「また次頑張ってみようよ」など、マイナスの結果を振り返るのではなく、次回への意欲につながるような声掛けをしてあげましょう。これを「もっと丁寧に計算してみよう」とか「昨日よりも遅くなってしまったね」などの声をかけてしまうと、かえって意欲を低下させてしまいます。
タイムが上がった日、タイムは変わらないけれど正答数が増えた日には、お子さんと達成感を共有してあげてください。自身の記録更新に対する嬉しさは増し、「次はもっと頑張るぞ」という気持ちは強くなります。保護者さまの声掛け一つで、お子さんの結果の捉え方、トレーニングに取り組む姿勢は変わっていくのです。
2.同じコンディションで取り組む
大人でも、朝と夜、仕事の前後などで頭の働き具合が違うように、子供も1日の中でコンディションは変化します。昨日は朝、今日は夜…といったように、毎日違う状態で行うと、コンディションに左右された結果になってしまいます。毎回、前回の自分に挑めるような環境で挑戦させてあげることで、集中力も変わっていきます。
3.100マスを埋めることが苦痛ならば、まずは量を減らして取り組む
100問の問題を多いと感じ、集中力が続かない場合もあるかと思います。毎回100マス計算の時間が苦痛で仕方がないと感じてしまっては、継続が困難になるでしょう。100マス計算のトレーニングにおいて重要なことは、反復と継続です。最初は5列分(50マス分)、慣れてきたら6列分…と増やしていってもかまいません。量をノルマ的にこなすよりも、いかにやる気を起こさせ、継続させられるかが重要です。
学力の向上に有効とされる100マス計算、朝の頭の体操としてのトレーニングや、日々の学習の導入などに活用されてはいかがでしょうか。